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太陽と月の神話 第156  月 [太陽と月の神話]

月の魔女・小泉茉莉花です。

太陽と月にまつわるお話は世界中にたくさんあります。
太陽と月の魔女ブログでは、そんなお話をご紹介していきたいと思います。
今回はアボリジニ(オーストラリア)に伝わる月のお話です。

月はかつては人間の男でした。
どんなにおちこんでいても笑って毎日すごしていました。
なぜおちこむかといえば、女の子を一度もおとすことができなかったから。。。。
陽気で明るいのに女の子の気をひくことは一度もできませんでした。

男は太っていて、鈍い頭。
夜ごと、あっちこっちでお嫁さんを探していました。
そんな男をみて周囲は、「月男が嫁探しにいくよ。」と噂していました。

ある日、月男は土手を陽気にぶらぶらしていました。
未亡人の娘ふたりが男に気がついて、どきどきして男をまっています。
「すごくいい声だもの。きっとハンサムよ。」
でも、月の姿がふたりの視界に入った途端、ふたりはがっかりしました。
太って、短い脚にぎらぎらした目の大きな頭。
「変な奴」二人は笑って、川岸のカヌーにとびのり、対岸にむかって漕ぎ始めました。
月は悲しげに叫びました。
「そっちにいってもいいか?」
二人の娘が冷たく答えます。
「あなたのことはきいてるわ。関わりたくないからあっちにいって」
「おなかがすいて疲れているんだ。すばるの姉ちゃんみたいにやさしくしてくれよ」

空で輝くすばるはやさしくて、美しくて少女たちのお手本でした。
少女たちはすばるにならって、月を呼んでカヌーにのせました。
「カヌーを貸してあげるから自分で漕いでみたら」
「おれは漕げないんだ」
「わかったわ、あなたをのせてこいであげる」
カヌーにのってすぐに男は女の子をくすぐり始めます。
「やめなさい」というとしばらくやめましたが、またくすぐります。
二人は男を川に落としました。
月男は深みにはまり、輝く顔でふたりをみつめました。さらに、沈んでいって、顔がどんどん小さくなり、三日月の形になるまでだんだん小さくなって、やがてまったくみえなくなりました。

二人は家に帰り、母親になれなれしい月男のこと、月男がどのように沈んだかの話をしました。
この知らせは部族中にしれわたり、カラスもこの話を広めました。
「月はもう絶え間なく輝くことはない。これからは精霊の国より現れる月を見るだろう。
はっきりと見えるのは西の空だけ。
夜ごと顔は円になるまで大きくなる。
それから次第に東に消えていき、薄い三日月として、きょろきょろしながら出てくるだろう。
まるでみられるのが恥ずかしいように、そしてだんだん自信を取り戻すように大きく顔をみせる。
いずれ月男は満月になって下界をみおろし、若くて、素敵な女の子の愛を得ようとするだろう。
それでも、失敗して、失望から隠れるように少しずつ消え去っていくのだ」

参考文献 太陽と月と星の民話 外国民話研究会他編訳  三弥井書店
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