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太陽と月の神話193 ミャオ族・9つの太陽 [太陽と月の神話]

こんにちは。太陽の魔女マリィ・プリマヴェラです。

太陽と月にまつわるお話は世界中にたくさんあります。
太陽と月の魔女ブログでは、そんなお話をご紹介していきたいと思います。
今日は、中国ミャオ族に伝わる太陽の神話をご紹介しましょう。

その昔、空には太陽がひとつ、月もひとつあっただけ。
その時代はとても平和で、美しく、実りは多く、
人々も動物たちも満ち足りた暮らしをしていました。

ある年、突然、9つの頭を持つ大きな真っ黒の鳥がやってきて
地上を覆ってしまいました。
世界は真っ暗闇になってしまったうえ、
黒い鳥のせいで、雷鳴が鳴りひびき、大風が巻き起こり、
天地は引っくり返りそうなくらいに荒れ放題に荒れたのです。

この黒い大きな鳥は、太陽の樹に8つの金の卵を、
月の樹に8つの銀の卵を産みました。
8864日後、8つの金の卵は8つの太陽に、
8つの銀の卵は8つの月になり、
それ以来、空には全部で9つの太陽と9つの月が出るようになったのです。

そのため地上は干上がり、凶作が続きました。
幸いなことにミャオ族は洞穴に隠れ、災難を免れたのですが、
ミャオ語で“よい兄貴”という意味の名を持つミナションは
この状況に我慢がならなくなりました。
なにせ、助けを呼ぶ声がそこここから聞こえてきたのですから。

そこでミナションは鷹と赤牛、黒犬、雄鶏を連れて
偽の8個ずつの太陽・月の退治に旅立ちました。

まず暗闇にまぎれて鷹が、月の樹にいた8つの偽月の目をついばみました。
そして月の樹から落っこちた偽月8つ全部を黒犬が食べてしまいました。
本物の月は慌てて東の山の後ろに落ちてしまいました。

一方、ミナションは、太陽の樹で眠っていた8つの偽の太陽を
ナタの背で叩き落しました。
落ちた8つの偽太陽は、赤牛に食われました。

本物の太陽はというと、月の娘に自分が本物の太陽だということを示すため
とんぼ返りを打とうとして飛び上がったときに
ミナションの姿を見て、びっくり仰天、
東の山の向こうに落ちてしまいました。

以来、月の樹には月がなく、太陽の樹にも太陽がなくなってしまい、
世界はまた真っ暗に…。
しかもミナションは太陽の樹の上に取り残され、帰れなくなってしまったのです。

そんな折、黒くて大きな、9つの頭を持つ鳥が戻ってきて、
目、鼻、口から火を吐いて、ミナションを焼き殺そうとしました。
そして、またここで金の卵、銀の卵を産もうというのです。
黒い大きな鳥と、ミナションは命を懸けて戦います。

ミナションを助けようと、雄鶏が太陽に向かってやさしく歌いました、
「恥ずかしがってはダメだよ、早く出ておいで、おいで…」と。
すると真っ暗だった空に、本物の太陽が現れました。
世界は光を取り戻し、ミャオ達はまた幸せになりました。

一方、ミナションは大きな黒い鳥を殺し、
月へ飛び移っていったということです。
だから今でも月に見える黒い影は、英雄ミナションのもの。


※「太陽と月の神話50」にもうひとつのミャオ族に伝わる太陽神話があります。
「ミャオ族・6つの太陽」もご参照ください。


参考:『太陽と月と星の民話』三弥井書店

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