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太陽と月の神話 第174回  ギリップと月の王女 [太陽と月の神話]

月の魔女・小泉茉莉花です。

太陽と月にまつわるお話は世界中にたくさんあります。
太陽と月の魔女ブログでは、そんなお話をご紹介していきたいと思います。
今回は ボルネオ島に伝わる月のお話をご紹介します。

ダヤク・ベノアク族のキリップという名前の青年は毎晩のように
ダヤク・ベノアクの伝統のあるサンペという楽器を奏でながら古い歌を歌っていました。
キリップは孤児で兄弟も姉妹もいませんでした。

キリップは毎日、両親が残してくれた土地を耕し、ときどき友達と狩りにでかけます。
ある日、キリップは友達から旅にでようと誘われました。
でも、両親がなくなってからは、残してくれた土地を耕さなければならないので
旅に出たくても出られません。

その夜もキリップはいつものように戸口に座って、サンペをひきながら歌いました。
それは世界一周の旅にあこがれる心を歌ったものでした。
父母から譲り受けた土地から離れたくても離れられない青年の心を伝えるように
悲しく響きます。

歌いながら、キリップはその夜が満月であることに気がつきませんでした。
寝ようとしたとき、突然、一筋の光が美しい王女に変わりました。
「あなたは、誰ですか?」キリップがおそるおそる尋ねました。
「私は月の王女です。助けていただいたお礼を言いに来ました」
「私が助けた? いつですか?」
身に覚えがないキリップが尋ねました。

「巨人のルーハがときどき私の光を吸い取りに来ます。
光が吸い取られると食になります。
もう月の王国はルーハによって制服されてしまったのです。
私は巨人の手に捕まえられていましたが、あなたのサンベの美しい調べが
月に届いて、巨人を傷つけました。
巨人は痛みにたえかねて私を放してくれました。
ありがとうございました!
感謝の気持ちを表すために何か欲しいものをあげましょう」

キリップはそれを聞いて喜んで答えました。
「王女さま、私は旅に出たいのです。
世界とはどんなものか、見てみたい」
「私の背中にのってください」
月の王女はそう言うと大きな鳥に姿を変えて、
翼を広げてキリップをのせました。

キリップの旅のはじまりです。
キリップは空の旅に魅了されました。
下を見ると、地上はなんと広いのでしょう。
自分の部族以外にもたくさんの部族があることに気がつきました。

大きな鳥はキリップの家に戻るとキリップをおろして飛び去りました。
旅はたった一晩でしたが、夢はかないました。
キリップは今まで以上に自分の土地を大切にするようになったということです。

参考文献 アジアの星物語 渡部宣男 監修  万葉舎

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