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太陽と月の神話 209回 月の沙羅樹 [太陽と月の神話]

月の魔女・小泉茉莉花です。

太陽と月にまつわるお話は世界中にたくさんあります。
太陽と月の魔女ブログでは、そんなお話をご紹介していきたいと思います。
今回は、漢に伝わるお話をご紹介します。

昔、大きな河のほとりに二軒のボロ家があり、
周りには数十本の柳がありました。
張天と李地は毎日、柳のほとりで魚をとっていました。
二人は数十年来の隣人で魚とりから帰ったら、月の下で語り合い楽しく暮らしていました。

春の花香る頃、李地が川にいくと、お茶碗ほどの蟹が柳の下をうろうろしていました。
李地は大喜びで捕まえて、甕に放して育てました。

3・4年後には蟹はお盆ほどの大きさになっていました。
8月15日の前の晩、李地は明日は少しばかりの酒と里芋を用意して、
帳天とともにお月見しようと思っていました。

すると、突然、後ろから、「ご主人」と呼ぶ声がしてふりむいてみると
あの大蟹が甕のふちから目を突き出してみていました。
「私を育ててくださって3・4年になります。
何のお礼もしてないので、明日の晩はあなたを月の宮殿につれていきましょう。
遊んで、ちょっと泥棒してきましょう」
「どうやって飛ぶんだ?」と尋ねると、
「私の背中に乗ればいいんです」と蟹がいいました。

次の晩、蟹は李地をのせて月をめざして飛び上がりました。
空はとてもきれいで、いくつもの星の間を経て、
突然、体がふわっとしたら月についていました。
李地は木陰に隠れて広大な宮殿を眺めました。
月の女神がウサギを抱いて、うるんだ目で下界を見下ろしていました。
着飾った仙女が一斉に笙や笛を吹きだしました。
李地は驚いて、「帰ろう」といったのだけど、
蟹はちょっととってきますといって、
沙羅樹の枝を一本抱えて月宮の裏からでてきました。

李地は蟹にとびのって、自分の家に帰ってくると
帳天は酔いつぶれてもう寝ていて、夜もあけようとしていました。
蟹は沙羅樹の枝を鉢にさして左右にふるとたくさんの金銀がおちてきました。

李地は魚とりにでるのをやめてしまい、蟹は甕に戻った。
隣の帳天は誘ってもこない李地を心配していたが、いつもご飯に肉というご馳走なので、
怪しんで、夜、訪ねていきました。
すると李地は小枝をゆすっていて、金銀がおちてきました。
「これは何だ?」「沙羅樹だよ」
「どこで手にいれた?」「蟹にのって月の宮殿から盗んだ」
「蟹は?」「甕の中」
帳天は蟹に飛び乗って、まっすぐ月に行きました。

沙羅樹に昇り、斧で切りつけました。
枝がざわざわして、仙女たちはさけびました。
「泥棒。また沙羅樹を盗みに来たんだね。逃がさないよ」と
腰の帯をほどくと樹のまたに帳天を吊り下げました。

蟹は飛んで帰り、海に逃げ込みました。
明るい満月の晩によくみるとぼんやりと沙羅樹がみえるでしょう?
木のまたにはぶら下げられた帳天もみえるはず。





参考文献 世界の太陽と月と星の民話  三弥井書店
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